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COLUMN
コラム

2025.10.13

猫のフィラリア症(犬糸状虫症)

こんにちは、獣医師の稲垣です。

先日、3年毎に開催されるAmerican Heartworm Society(AHS)において猫における犬糸状虫感染症のガイドラインが発表され、勉強会に参加してきましたのでここでも少しお話しようと思います。
犬ちゃんのフィラリア症(犬糸状虫症)は皆さんもご存じかとは思うのですが、近年猫の飼育頭数が増えてきたこともあり、猫ちゃんのフィラリア症も注目視されています。

フィラリアってなに?

フィラリアとは糸状の寄生虫で、蚊によって媒介されます。成虫の見た目は白い細いミミズのようなもの、回虫の成虫に似ています。世界的、日本全土にも分布しており、各地で犬ちゃんのフィラリア症予防シーズンがあるのは皆さんご存じかと思います。(横浜だと5月から12月が予防シーズンですが、温暖化により変化しつつあるようです)

時々飼い主様から「フィラリア症になっている子はほとんどいないのだから、フィラリア予防しなくてもいいのでは?」とご質問いただくこともあるのですが、たしかに私自身もフィラリアの成虫は標本で見たことがあるくらいで、生きている状態で見たことはありませんが幼虫段階のフィラリア、ミクロフィラリアは血液中に存在しているものを顕微鏡で何例も見たことがあるので、未だにフィラリアというのは存在しているのだなと感じますし、予防は必要だとお伝えしています。私が以前勤めていた横浜の病院でも2024年にフィラリア陽性犬はいましたし、横浜でもフィラリアを持つ蚊が飛んでいるのだなと怖くなりました。

この糸状の虫であるフィラリアに感染して起こる病気のことをフィラリア症と言って、フィラリア症予防薬というのは、フィラリアに感染すること自体を予防するのではなく、感染していると仮定して身体に侵入したフィラリアを殺すための駆虫薬を毎月定期的に飲ませることでフィラリアに感染したときにおこる諸症状を予防しましょうというものです。

多くは無症状からはじまりますので、感染に気が付きませんから小さなうち、症状が出ないうちにフィラリアの駆虫薬を飲ませましょうということですね。

猫にもフィラリア症はあるの?

猫ちゃんのフィラリア症は日本でも報告があります。2011年から2017年の報告ですが、青森・鳥取・岡山・福岡・千葉の完全室内猫ちゃんから室内外の猫ちゃんと幅広く報告があります。完全室内猫の報告があったのは意外でしたが、フィラリア症と診断された猫の25%が完全室内飼いであったという報告や、10階のマンションで飼育された猫にも感染例がいたという報告もあります。
室内であっても蚊が入ってくる状況、エレベーターで蚊が上部に上がってくるような環境では感染のリスクがあるということなんですね。
また、2024年の宮崎の報告でも愛護センターに収容された猫ちゃんの199頭のうち7頭、3.52%がフィラリアの暴露があった可能性があると示唆されています。

猫がフィラリアに感染したらどうなるの?症状は?

猫ちゃんは犬ちゃんよりも宿主感受性が低いため寄生数は少なく、ほとんどは無症状ですが、中には突然死することもあったりと幅広い症状を示します。特に注意すべきは喘息症状や呼吸器症状で

  • 呼吸が早い
  • 断続的に咳をする
  • 呼吸をするのが辛そう

といった症状がある時は注意が必要です。犬糸状虫随伴呼吸器疾患(HARD)の可能性も考えなくてはいけません。

猫ちゃんのフィラリア症の治療法は?

実際に猫ちゃんがフィラリア症と診断された場合には2つの選択肢があります。内科的に感染したフィラリアが寿命を迎えて死ぬまで弱らせる、フィラリアに感染することでおきるアレルギー症状や呼吸器症状を抑える治療法か、外科的に肺動脈に寄生している虫体を除去するか、になりますが無症状の猫さんにたいしては外科手術もかなりの高リスクであったりするのであまり選択されないようです。とはいえ、突然死のリスクも抱えながらフィラリアの寿命(猫では約2-4年と言われています:犬では3-7年)を待つのも怖いですよね・・。だから予防しようという声が広がってきているんです。

猫ちゃんもフィラリア症の予防が必要?

結論からいうと、予防しておくことでフィラリア症を防ぐことができる。ので、しておいた方が良いとおすすめしています。

特に蚊の暴露の多い地域、エリア、家に蚊が侵入してくる場合には室内であってもフィラリア感染のリスクがあります。予防しておくことで呼吸器症状や突然死のリスクを減らすことができます。

予防薬は、レボリューションやエビクト等のスポット薬がメインで猫ちゃんが自分では舐められない首の後ろの毛をかき分けて1か所に全量塗布します。

猫ちゃんで使用されるフィラリア薬

薬は経皮吸収で血液の中に入り全身に回って、血液中のフィラリアに対して有効です。

投与期間は5月から12月 月に一度塗布します。(地域によっては通年予防する場所もあります)

最近では飼い主さんからも、猫ちゃんのフィラリア症についてご相談受けることも多くなってきており、猫ちゃんにもフィラリア症予防がひろまりつつあります。突然死の原因の一つにもなっているフィラリア症は予防することができる病気ですので、当院でも猫ちゃんのフィラリア症予防をお勧めしています。

蚊をみたら夏じゃなくてもフィラリア症予防!ですね・・・!

(写真は内覧会の時の院長先生役をしている先生の愛猫れいちゃんです)

猫ちゃんのフィラリア症予防を希望の方は診療にてご相談下さい。ご予約お待ちしております。